2015年9月1日火曜日

SS③ 始まりの場所

SS③ 始まりの場所



取材陣から逃れるようにして、2人、車へ乗り込んだ。
走り出すリムジンの中、マークの横顔はどこかスッキリとして見える。

「言いたいこと、言えたんだ?」

マークは強く頷くと、私を見てにっこり笑う。

マーク「ほんと、⚪︎⚪︎のおかげ」

「私は何も…」

マーク「ううん。感謝してる」

そう言ってじっと見つめられ、私は恥ずかしくなって目を逸らした。

「…それで、これからどこに行くの?」

マーク「それは着いてのお楽しみ」




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セントラルパークでリムジンを降りると、マークは私の手を引いて歩く。
そして前に2人で来た芝生の辺りで足を問えた。

「ここに来たかったんだ…」

マーク「もっと賑やかな場所が良かった?」

「ううん、賑やかなのはもう今日は十分に堪能したから、のんびりするのに賛成」

マーク「俺は今日ここ、二回目だけどね」

「そうなの?」

マーク「映画プレミアの前に、ここに来て空見てた…」

あの日のマークの言葉が蘇る。




マーク「ここから見る空って、広くて青くて…抱えてる悩みや不安も吹っ飛ぶんだ」
   「だから、また何かに悩んだりしたら、ここに来よ」




(マーク、不安抱えながら今日を迎えてたんだな)

どれだけの思いでマークが今日のプレミアに臨んだのかと思うと、胸が詰まった。

「誘ってくれたら一緒に来たのに…」

マーク「映画プレミア最初断ったくせに」

「…そっか」

マークはからかうように笑いながら歩き出す。
2人の手がずっと繋がれたままなことに私は密かにドキドキしていた。





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ゆっくり歩いていると、噴水広場に出てくる。
マークは噴水の前で足を止めると、月の光を受けキラキラ輝く水しぶきを眺める。

「綺麗だね…」

マーク「こんな風にアイデアが沸き続けるといいな」

「マークなら大丈夫。きっといい映画を撮れる人になるから」
「マークの映画のプレミア上映には呼んでね」

マークはくすぐったそうに笑うと、噴水を眺めながら言う。

マーク「今までは父さんの期待に応えるために生きてきたけど、これからは自分のために生きてくよ」

「…応援する」

マーク「絶対に譲れないものって、あるんだな」

「マークにとって映画はかけがえのないものだもんね」

マーク「いや…映画だけじゃなくて」

「…?」

マーク「絶対に譲れないものが…俺には二つある」

「…もう一つは?」

聞き返すと、マークは私の両手を包み込み、目を覗き込む。




マーク「ちゃんと言うね…。俺…⚪︎⚪︎が好きだよ」

私は嬉しさと恥ずかしさで、思わず俯いてしまう。

マーク「⚪︎⚪︎…こっち見て?」

マークに促され、顔を上げた。
するとマークはまっすぐに私を見つめる。

マーク「キス、しよ」

(え…)

応える間を与えず、マークは優しくキスをした。
驚いて固まる私を、マークはぎゅっと抱き寄せる。

マーク「本当は…ずっとずっと好きだった。レオンじゃなくて、俺を見て…」

耳元で聞こえるその声は、真撃に胸に響いてくる。
私は感動で胸が熱くなって、言葉が出てこない。
腕の力を緩め、マークは不安そうにこちらを見た。

マーク「…」

「とっくに、見てるよ…」

絞り出すようにそう言うと、再び二人の唇が重なる。
ゆっくり唇が離れ、マークはおでこをくっつける。

マーク「…めっちゃ緊張した」

そういうと、マークはまた長い腕で私を包み込んだ。

マーク「なんか、キスとハグのエンドレスかも」

「ほんと…」

マーク「でも、こういう風にちゃんと女の子を好きになって」
   「ずっとこの子といたいって思えたの…初めてだから」

「…うん」

マーク「だから…エンドレスでいたい。⚪︎⚪︎は…ずっと一緒にいたいよ」

「私もだよ…マーク」

生まれてきた環境や住む世界の違い、そこから生まれる価値観のギャップ…
そういうものをかなぐり捨ててでも、マークと一緒にいたいと、私は思った。

(マークの胸の中、すごくあったかい…)

噴水の水の音に包まれながら、私たちは呆れるほど長い間、抱き合っていた。





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公園はすっかり人気もなくなり、二人は名残惜しげに体を話す。

マーク「そろそろ、帰ろっか」

(もっと、マークと一緒にいたい)

目を伏せた私の頭にそっと手を置くマーク。

マーク「パパを心配させちゃダメでしょ」

「…そうだね」

力なくそう答えると、マークは小さく微笑み、私の頬を両手で包み込む。

マーク「ちゃんと大切にしたいからさ。ね?」

「ありがと」





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「ただいまー」

家に帰ると、パパとエミリーが出迎えてくれた。

エミリー「おかえりー、⚪︎⚪︎。どうだった?」

「すごく楽しかったよ」
「エミリーのおかげでレッドカーペットもどうにかクリアできたし」

エミリー「…なんだか、やけに清々しい顔してるわね」

「え…」

エミリーにまじまじと顔を見つめられ、私はなんとなく視線をそらす。

(エミリーの勘が鋭いのはわかってたけど…キスしたことまでわかっちゃの!?)

パパ「レッドカーペットとやらは、そんなに気分いいものなのか」

「そ、そうだね」

エミリー「ふうーん」

(なによ、エミリーってば…)

私はそそくさと自室へ逃げ込んだ。





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それから数日経ったある朝。
私は驚きのあまり飛び起きる。
『ゴシップガール』に、セリーナがドラッグストアで妊娠検査薬を買う姿がゴシップされたのだ。

(セリーナ…大丈夫かな)



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学校へ行くと、登校中の学生から漏れ聞こえる会話は、セリーナの妊娠の話題で持ちきりだった。

男子生徒「誰が父親だろ」

男性生徒「ダンじゃないってことか?」

男子生徒「セリーナのことだからわかんないぜ」

(みんな好き勝手言って、ひどい!)

すると、その男子生徒たちの間を割って入るようにセリーナが現れる。

セリーナ「誰が父親になってくれるって?」

男子生徒「えっ…」

セリーナ「あなた?」

男子生徒「…い、いや」

セリーナ「意気地なしね」

慌てて逃げ出す男子生徒をセリーナは呆れたように見据える。

「セリーナ!」

セリーナ「ハイ、⚪︎⚪︎」
    「もう、朝から父親探しで大忙し」

「…え」

セリーナ「冗談よ」
    「詳しいことは放課後話すわ。16時にパレスホテルのコーヒーショップで、どう?」




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学校が終わり、セリーナと私はコーヒーショップで落ち合った。

セリーナ「ごめんね驚かせて」

「そんなこといいの。それより…」

するとその時、ジェニーが店内に入ってくる。

ジェニー「ハイ、⚪︎⚪︎、セリーナ」

「ジェニー…」

ジェニー「…あ、なんだか2人して神妙な顔してる。大事な話してた?」

「う、うん、まあね」

ジェニー「邪魔しちゃったみたいだね。ちょっと友達と待ち合わせてるだけだから、じゃ」

セリーナ「ごめんねジェニー」

ジェニーに手を上げ離れた席へ腰を下ろすと、
MP3プレーヤーで何か聴き始めた。
セリーナは気を取り直すように小さく息をついて口を開く。

セリーナ「実はね、あの検査薬は自分のために買ったんじゃないの。ブレアに買ったのよ」

「え…ってことは」

セリーナは真剣な表情でうなずき返す。

セリーナ「ブレア…チャックの子供を妊娠したかもしれない」

「チャ…」

思わず大声出してしまいそうになって、慌てて手で口を塞いだ。
脳裏に蘇るのはブレアとチャックのキスシーン。

(…あの2人、やっぱりそういう関係だったんだ)

セリーナ「私も驚いたよ。相手がよりによってチャックだなんて」
    「でもブレアはストレスでアレが遅れてるだけって言い張って」
    「なかなか妊娠テストをしようとしないの」

「…困ったね。ブレアの力になりたいけど、どうすればいいんだろ」

するとそこへ、『我が家』へ帰ってきた話題の人が登場。

チャック「やあ、お二人さん、ごきげんよう」

そういうと、セリーナのコーヒーカップへ視線を落とす。

チャック「おや?今はカフェインを控えた方がいいんじゃない?妹よ」

セリーナ「親同士が結婚するからって、あなたと兄妹になるつもりはないから!」

チャック「そう荒ぶるな。ああ、あれか、マタニティー・ブルーとやらかな」
    「これだから女はめんどくさい」

セリーナはチャックを睨みつける。

セリーナ「妊娠したかもしれないのは…ブレアだよ」

途端、チャックの顔が青ざめた。

チャック「…なんだって?」

セリーナ「知ってるんだからね。チャックがブレアと、そういうことしたの」

チャックは動揺の色を見せながらも、はっきりと答える。

チャック「妊娠させたのは俺じゃない」

セリーナ「責任逃れする気?!」

チャック「いや、俺は責任を持ってヤッた。ゴムをつけてな」
    「だが、同じ週にブレアと寝たネイトはどうだろう」

(え…!?)
(ブレア…ネイトと別れたんじゃなかったの…?)

愕然するセリーナと私の後方でジェニーの耳のイヤホンが片方だけ外れていた。
その夜、『ゴシップガール』にはブレアの記事が投稿されてしまう。



ゴシップガール『Sの妊娠疑惑はBをかばっただけ』
       『Bは同じ週に2人の男と寝た』
       『我らがバージン・クイーンは、意外とピュアじゃなかったみたい』
       『パパは誰?B!」
       『バージン・クイーンあらため、ダーティー・クイーンね!』



To Be Continued……



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